【伝道掲示板 2021年6月のことば】
悩みや苦しみを打ち明ければ、
それが自分を見つめるご縁になる
【住職感話】
北陸のある住職が月命日(月忌)のお参りで会う小学生の女の子に「学校でいろんなことあるやろ。何かあったら阿弥陀さんに『ほとけさんあのね』と話しかけてごらん」と声を掛けました。すると毎月、けんかしたことなど、仏様といろんな話をしたと報告してくれました。中学3年になった彼女は高校受験で希望の学校に行きたいが、父親が反対していると打ち明けました。「仏さんはどう言っとるんや」と住職が聞くと「自分の意志をとおしなさいって」と。事情があって最後の月参りで、住職は「苦しみや悩み、悲しいことから逃げてはいけない。そこから教えられることがある」と書いた紙を渡しました。
彼女は喜び、その後、希望する学校に進んだことを住職は人伝に聞きました。それから、住職が彼女と再会したのは30年ほど経った彼女のお葬式でした。彼女の母親は「大人になってからも、ずっと紙を大事にしていた」と住職に伝えました。
住職は語ります。
「お内仏を前にして、あるいは自分の心の内にいる仏様に「あのね」と語り掛ける。仏教では「生死」を表裏一体で扱うのと同様に、苦しみや悲しみは、喜びと表裏一体のものです。悩みや苦しみを打ち明ければ、それが自分を見つめるご縁になるのです。」と。
悩んだり苦しんだりした時、まず自分の思いを「ほとけさんあのね」と語り掛ける。それが、自分が本当はどうしたいかを見つめる、確かめるご縁になる。仏様との対話を通して、信頼する誰かに打ち明ければ、悩みや苦しみが喜びに転じられる道が開けていきます。