ありがたし 故人と過ごす 盆会かな【2023年8月の心に響く言葉】

2023年8月のことば
ありがたし 故人と過ごす 盆会かな 
釋祐順
【住職感話】
「お盆」は、仏教用語の「盂蘭盆会(うらぼんえ)」を略したことばで、語源はサンスクリット語(古いインドの言葉)の「ウラバンナで「逆さ吊り、逆さま」という意味です。
ある時、神通第一の仏弟子・目連尊者が、餓鬼道に堕ちていた母親を神通力で見つけました。そこで、なんとか母親を救いたいと思い、神通力でもって食物を差し出しますが、母親が口に入れようとすると炎となり、救うどころか、逆に母を苦しめることになりました。そこで、お釈迦さまに救(たす)けを請うと、7月15日、雨期の安居(勉強会)を終えた後、修行していた僧侶たちに飲食物の供養をするようにいわれ、これを実行したところ、餓鬼道で苦しむ母親を救うことができた、というものです。
ではなぜ母親は餓鬼道に堕とされたのか、それは吝嗇(りんしょく)だったからです。吝嗇とは物惜しみをすること、つまりケチだったからです。例えば、目連が子どもの頃、母親は周りの子どもたちには食物を与えず、我が子に対してだけお腹いっぱい食べてさせました。また、目連が托鉢に訪れた際、我が息子にのみ多くの食物を施したとも言われます。
目連は自分のことを育ててくれた母親に対して、母親は吝嗇という罪を犯したのだから、当然餓鬼道に堕ちたと見ました。しかし、自分を育てるために餓鬼道に堕ちた母親の心に気づき、自分の見方が傲慢だったこと、逆さまだったことを懴悔告白されました。これによって母親、目連ともに救われたのがお盆のはじまりです。