御懇志とは
如来さまからの恵みを
如来さまにお返しすること
[住職感話]
昨年7月から始めて1年、本堂お内陣の花天井【別永代経志(別祠堂)の記念品】へのご寄進(御懇志・御布施)を多くの御門徒から賜りました。予想を超える40名という人数に驚きを隠せず、この紙面を借りて深く感謝申し上げます。
さて、皆様、とても良い機会だと大変喜んでご寄進くださったのですが、どういうお心持ちでなさったのでしょうか。そこで、たまたま『妙好人のことば』(梯實圓著・法蔵館)を読んでおりましたら、大和の清九郎のお話に答えが見つかりました。
清九郎は妻に先立たれ晩年、娘・婿夫婦に家をゆずり、峠の上に粗末な小屋を建てて隠居しました。彼が妙好人として有名になるにつれて、様々な人が訪れてきますので、いくらなんでもみすぼらしいということで、同行(仲間)がお金を持ち寄って家を建てかえる話が持ち上がりました。ところが、清九郎はお金を受け取ろうとしません。「このお金は、皆様の御懇志ですから、もとをいえば如来さまの恵みでございます。そこでこのお金は如来さまにおかえしするという意味で、ご縁をいただいている宿坊の因光寺の御仏具を新しくととのえていただいたらこの上もないしあわせでございます」という理由でした。
大抵の人ならば、自分のお金は自分の物としか思えません。しかし、元をたどれば、お金のみならずすべてのものは、実は、如来様(仏様)からの恵みだったと喜び、だからこそ、如来さまへ喜んでお返しするのが御懇志なのでした。この領解に、私はより一層驚きを隠せずにいます。