2024年5月のことば
遠く宿縁を慶べ
親鸞聖人
【住職感話】
私たちは縁によって生まれ、縁によってむすばれ、縁によって従来の人生観を一変するような師に遇うのです。この師に遇い得た喜びを親鸞は遠く宿縁を慶べと言われました。図らずもめぐまれていたのです。運命は、自分と境遇とが離れている、自分と境遇が一つになったのを宿業を背負うと言います。運命として前において眺めている間は元気は出ませぬ。宿業を背負って立ち、境遇と一つになった時、生きぬく力が出て来ます。本来与えられている力が出て来ます。≪中略≫
両親も夫も子供もとりかえることはできません。それを有難くいただくところに、明師に遇って真実の自己に目ざめねばならぬ所以があります。 『大きな手のなかで』(米沢英雄著 樹心社)
今月3日、祖母・前々坊守寿楽院釋尼慶縁十三回忌法要を迎えます。祖母の法名「慶縁」は、2007年、祖母93歳の時に本山で帰敬式を受式していただいたものです。その時私は、祖母の人生を振り返って見つめ直しました。祖母は、1914(大正3)年、東京で生まれ、1940(昭和15)年に結婚し、1943(昭和18)年に父一郎を亡くし、東京大空襲に遭い、夫を戦病死で亡くし、1950(昭和25)年、36歳のとき母留尾と一緒に西勝寺へと嫁ぎました。宿業を背負って立ち、境遇と一つになって、生きぬいてくれました。だから、元気で明るく、苦労を口にせず、ご縁を慶ぶ後ろ姿を見せてくれました。まさに「有り難や 勿体なやで 日を暮らす 人には娑婆も 浄土なりけり(青田帰一)」のお人でした。