2023年2月のことば
大きな大きな
しあわせのどまんなか
東井義雄
[住職感話]
東井義雄師は豊岡市但東町の浄土真宗本願寺派東光寺の東井義澄住職の長男として、明治45年(1912)4月に生を受けました。お父様の義澄住職は7年間もの病床のなか、「生きておれば、何の役にも立たんわしを、おまえがこうして案じてくれる。いま、息が絶えても、大きな大きなお慈悲のどまんなか。世界中に、ぎょうさん人間は住んでいるが、わしほどのしあわせ者が、ほかにあろうかい」と仰って63歳で亡くなられました。師はお父様の最後のお言葉を『人間に生まれさせていただいた以上、「生きても、死んでも、しあわせのどまんなか」という世界に到達できなかったら、人間に生まれさせていただいたねうちはないのだよ』と受け止められました。
ところで、私の母(前坊守)が83歳になりました。お陰様で、身体の方はそれなりに健康で、一人で日常生活を送るのにそんなに支障はありませんが、認知症が進行しています。短時間接する方は見分けがつかないかもしれませんが、特に直近の記憶力が低下しています。共にこれまでにない辛くかなしい体験をしています。
振り返れば、父(前住職)が亡くなって19年余り、母にはお寺のこと、家族のこと、本当にたくさん助けてもらいました。母のお陰で、なんとかお寺の法要行事を昔のままに引き継ぐことができ、幼かった子どもたちも今では大学生と高校生に育ててもらいました。また、相談事、悩み事そして愚痴をたくさん聞いてもらいました。
師は私に、母がたとえ認知症であっても、母も私も「大きな大きなしあわせのどまんなか」にいることを教えてくれました。